高級時計とは、実は安い買い物である。定期的にオーバーホールさえすれば、100年以上先まで使えるのだから。事実、アンティーク時計市場には、100年以上前に作られた懐中時計が、立派な現役として売られてもいる。 フィリップ・デュフール氏は、そうした100年以上前から続く、スイス伝統のウォッチメイキングを、往時のマシンを用いてハンドメイドする孤高の独立時計師として知られる。曰く「今はちゃんとした時計が少ない」。 ムーブメントの仕上がりに問題があったり、ケースなど外装パーツの供給が止まったり、デザインが古臭くなってしまったり、実際に100年使える時計は少ないのだと。翻って、ムーブメントが本気で仕上げられ、ブランドとして修復の体制を整え、普遍的なデザインを与えられていれば、その腕時計は、100年時計たる価値を持つ。 英知の結集と、多くの人の手から生み出される腕時計は工業製品ではなく、ひとつの工芸品としての気品をまとい、短期間で消費されることを、自ら拒む。トレンドに流されることのない価値ある1本。100年先に伝えられる腕時計を見つける。